この記事ではマンチェスター・シティの戦術やその強さの秘密、アグエロのプレーを解説しています。
18/19シーズンプレミアの山場
2019年最初のビッグマッチ、マンチェスター・シティ 対 リバプールの試合が行われましたが、シティが勝負強さを見せつけてリバプールとの勝ち点差を縮めました。
(試合結果やフォーメーションはこちら)
「両チームともプレスやビルドアップのレベルが高すぎて試合自体が膠着してた」、、、っていう表現が一番当てはまりそうな戦いでしたが、個人的に印象的だったのはマンチェスター・シティの選手たちのプレー強度の高さでした。
特にベルナルド・シウバなんかは最初からピッチを走りまくってましたし、球際のところはガンガン体をぶつけて相手を削りに行ってましたから、ホントに見ていてびっくりしました。
そして、マンチェスター・シティがこの試合に勝てた一番の要因はプレッシングの強度だったと考えています。
相手のリバプールも相当強度が高いんですが、この試合のシティの選手たちの気迫はホントにすごかったですね。
逆にリバプール側は少しプレッシングの勢いが弱かった印象がありますけど、アウェーゲームということで仕方なかった部分もあるでしょうか。
そんなわけで今回はマンチェスター・シティのすごさについて解説していきます。
守備や得点シーンの話がメインです。
シティのプレッシング
フォーメーション
マンチェスター・シティとリバプールのフォーメーションです。
これを頭に入れておきながら次の点に注目してください。
↑の図はマンチェスター・シティがプレッシングをかけているシーンです。
特徴的なのは前線の並び。
普通はアグエロを挟んで両ワイドのザネやスターリングが並んだ形が一般的なんですが、シティのプレッシングはアグエロの高さまでダビド・シルバが上がっています。
以前も記事で取り上げたことがあるんですが、ダビド・シルバのボールへの寄せ方は天才的にうまいです。
ほとんどのパスコースを消しながら相手ボールへ寄せていきますから、FWで守備を頑張りたい人にもかなり参考になるプレーだと思います。
絶妙なポジショニング
そして、アグエロとシルバが並んだかわりにベルナルド・シウバがアンカーのヘンダーソンをケアしています。
彼らを線で結ぶと三角形の形になりますが、選手の入れ替わりがあってもこの形は試合を通して維持されてましたね。
(その代わりシルバ⇒ギュンドアンの交代で少しズレていきましたが)
ザネやスターリングは少し下がった位置から相手のSBやマネ・サラーへのパスコースを限定するような動きをしています。
それに降りてボールを受けようとするワイナルドゥムやミルナーを牽制する動きもありました。
彼らもホントにいいポジショニングをしていますから、リバプールとしてはなかなかサラーやマネに縦パスを通すことが難しくなっていますね。
カウンター対応
シティの守備面でもう一つ紹介しておきたいのが、このカウンター対応です。
この試合のラポルトはホントにサラーのことをちゃんとケアしていました。
前半のビッグチャンス(マネのシュートがポストに当たったやつ)の時にはサラーが中央にいたので仕方ありませんが、全体的にラポルトはしっかりサラーをケアできていたと思います。
どちからといえば彼自身は攻撃参加する場面が少なく、反対側のダニーロが駆け上がるような感じになっていましたが、一番怖いリバプールのロングカウンターを防ぐためにグアルディオラがそういう指示を出したのかどうか気になるところですね。
最終ラインのメンバーにはケガ人や出場停止の選手がいたことから、全員がベストな状態だとラポルトをここで使ったかどうかは不明なんですが、結果的にここの采配は当たったんじゃないでしょうか。
アグエロのゴール
左サイドへの展開
ここからはシティの得点シーンを解説していきます。
とはいっても特別説明しなきゃいけないゴールっていうわけでもありませんでしたが、とりあえずこのゴールはアグエロのプレーがホントにうまかったです。
左サイドからのクロスボールをファンダイクと競ったアグエロは体をぶつけられた影響でその場に倒れています。
クリアボールをシティのベルナルド・シウバが拾ってドリブルで左サイドに展開。
それをリバプールの選手たちが詰めているところになります。
スペース
ベルナルド・シウバが深くドリブルすることによってリバプールDF陣は自ゴールの近くまで下がることになります。
そして、倒れていたアグエロもここでリバプールのブロックに合流することになります。
このシーンのポイントは黄色ラインで囲ったロブレンの前に少しあるスペースです。
ロブレンの背後にまわったアグエロはベルナルド・シウバがボールを蹴るタイミングでこのスペースへ侵入します。
相手CBのロブレンは背後にアグエロがいることに気付いていたとは思いますが、まさか入れ替わられるとは考えていなかったんでしょう。
ゴール
そしてこのシーンになります。
先にさわられてしまったロブレンとしてはこの後の対応が非常に難しく、できるだけ体を寄せながらシュートコースを消していくしかなかったんですが、アグエロのトラップが絶妙でしたしその後のシュートがアリソンの頭上をぶち抜くヤバいシュートだったことから、あの対応が精一杯だったのではないかと考えています。
まあ、この一連の流れはアグエロの
-
・スペースの狙い方
・トラップ
・シュート
が、スーパーでしたね。
ザネのゴール
効果的な縦パス
今度はザネの決勝ゴールです。
このゴールはダニーロからスターリングへ向けた1本の縦パスが攻撃の起点となっています。
珍しくリバプールのDFラインが少しズレているのが↑の図でもわかるかと思います。
スターリングをケアしてたロバートソンとしてはここを狙われてもオフサイドになると考えていたと思いますが、実際はロブレンが少し残っていたことでオフサイドを取り損ねた格好になっています。
ホントにちょっとしたズレですし、これがロブレンのミスといえるのかどうか微妙なところだったんですが、このちょっした隙間をきっちり狙ってゴールまで結び付けたマンチェスター・シティの攻撃が素晴らしかったと言えるシーンですね。
アグエロの動きがポイント
そして、ボールを受けたスターリングは斜めに(ゴール方向に)ドリブルを開始しています。
このシーンのポイントはやっぱりアグエロの動きになります。
アグエロにはアレクサンダー・アーノルドがマークしていましたが、アグエロがゴール前のスペースを狙う動きを開始したことによって、ザネの目の前に広大なスペースが生まれることになります。
おそらくアグエロはザネの動き出しを認識していたと思いますけど、基本に忠実にゴール前の一番得点できる可能性があるスペースをきっちり狙う動きしています。
アーノルドとしてはザネの方をケアしに行くと一番危ないアグエロがフリーになってしまいますから、ここの対応は仕方なかったと思います。
まあ、その後のザネのシュートはホントに見事だったんですが、リバプールとしては少し悔やまれる失点だったのではないでしょうかね。
効果的なスペースの使い方
シティの攻撃がすごいところ
今度は第25節のマンチェスター・シティ対アーセナルの試合からシティの攻撃シーンをピックアップしています。
(試合結果やハイライトはこちら)
↑の画像はその時のフォーメーションです。
アーセナルは4‐4‐2で非常にコンパクトな守備ブロックを形成していますが、それに対してマンチェスター・シティはWBのスターリングが大外のエリアにポジショニングして”幅”を取っています。
ゾーンディフェンスをやっているアーセナルとしては、このスターリングをマークするわけにはいかず、当然フリーの状態です。
それに対してフェルナンジーニョが浮き球のパスを通そうとしているところになります。
とはいっても、このような展開はどのチームでもやることができます。
シティがすごいのはここからの展開ですね。
スペースの使い方
スターリングにパスが通った直後のシーンです。
(ここからギュンドアンに折り返しています)
アーセナルはボールホルダーに対してチェックする必要がありますから、リヒトシュタイナーがスターリングに寄せています。
ここで注目してほしいのが黄色丸で囲ったスペース。
リヒトシュタイナーが動くことによって、ここのスペースは絶対に空いてきます。
スターリングはギュンドアンへの折り返しのパスを選択しつつ、その後の展開を予想してこのスペースへ走りこむ動きをします。
相手の守備の先
それによってこの状況が生まれます。
ギュンドアンとのワンツーパスにより、スターリングの狙い通りリヒトシュタイナーの背後を取ることができています。
常に揺さぶられて対応が後手後手になっていたアーセナルDF陣は、見てわかるように最終ラインがかなりズレています。
もちろん、この状況に至るまでの選手のスプリントの速さやボールスピード、それに球離れがハイレベルだったのは言うまでもありません。
ちなみにアグエロはオフサイドポジションにいましたが、スターリングがここでパスを受けることによって、そんなものは関係なくなりました。
シティでよくあるパターン
そして、これがゴールシーンです。
フリーでボールを受けたスターリングはそのままダイレクトでアグエロに折り返し。
アグエロはフリーだったため、簡単にゴールに押し込むことに成功しています。
今回の一連の流れ。
実はマンチェスター・シティではよく見られる攻撃パターンです。
ゴールポストの脇
このボックスの中の深い位置にあるスペースを、ホントにシティの選手達は効果的に使って(狙って)きます。
もちろん、そのスペースを一人で狙ったところで大した脅威にはなりませんが、全員が連動してその後の展開まで(ゴールまでの道筋)を共有しながら動き出していることが、マンチェスター・シティがゴールを量産できている理由になります。
大体、マンチェスター・シティと対戦するチームはかなりリトリートして守ってくる相手ばかりなんですが、それでもボックスの深い位置にあるあのスペースを完全に消すことは不可能なんです。
「引いて守ってくる相手をどうやって崩すか?」の答えを、このチームは確実に一つ示してくれています。
本当にマンチェスター・シティは素晴らしいチームです。
グアルディオラ監督や選手たちを含め、プレミア王者にふさわしいチームを作り上げています。
今シーズンは少し苦戦気味なところもありますが、まだまだシーズンは続いていきますから、今後の活躍に期待しています。