現代サッカーの攻撃においては「いかに相手ゴールまでボールを素早く運べるか?」が重要です。
いわゆる”縦に速いサッカー”というものを指すことになりますが、守備戦術が発達してきた昨今においては相手チームに勝つうえでこの考え方がホントに大事になってきます。
昔のブラジル代表みたいなゆっくりとしたテンポで展開されるモダンサッカーはもう流行りません。
彼らは圧倒的な個人技をもって相手選手を翻弄しておりましたが、今やそういった選手は限られてきています。
(ネイマール、メッシ、アザールとか)
それに個人で攻撃を完結しようとするのは非常に効率が悪いです。
やっぱり人数をかけた方が相手の注意を分散することができますし、それによってスペシャリスト達が存分に力を発揮することができます。
攻撃のスタイルは2つ
サッカーの攻撃は基本的に遅攻と速攻に分類されます。
”速攻しか”しないチーム、”遅攻しか”しないチームというのは存在しません。
戦い方というのはその時々の状況で変わってきます。
むしろ、両方ともスムーズにこなせるチームが本当に攻撃が強いチームだといえます。
ここでいう状況というのは、相手チームの守備ブロックがどうなっているか?ということです。
自チームの攻撃人数に対して相手の守備陣の人数が多いのか?少ないのか?を判断する必要があります。
攻撃の人数に対して、相手守備陣の人数が少ない場合には「速攻」がかなり有効となります。
むしろそこで時間をかけてしまうと相手チームの選手が相手陣内に戻ってきてしまう(プレスバック)ので、自分達が使えるスペースがどんどん消されてしまいます。
そのため、どれだけ速く攻撃できるかがミソとなってきます。
逆に「遅攻」の場合は、スペースも狭く相手チームの守備ブロックが整っているので、急いで攻撃することにあまり意味がなくなってきます。
むしろ、パスをつないでいきながら相手の守備ブロックを揺さぶったり、オフザボールの選手が相手選手を釣ったりしながら、守備ブロックのスキを狙っていくようなことを積極的にやる必要があります。
そして、この時はやっぱりサイドから攻めようとすることが多くなります。
(だいたい中央よりサイドの方がスペースがありますから)
具体的にはサイドにボールを集めて、相手守備ブロックをサイドに集める⇒逆サイドが手薄になる⇒サイドチェンジ、みたいな流れになります。
こういったことを繰り返していると真ん中のエリアが空いてきたりするので、その選手に対してセンタリングをあげてあわせたり、少し下がり目のポジションならそこからミドルシュート狙ったりなんかもします。
速攻はボールを奪ってから
速攻っていうのは結局カウンターのことを指しています。
相手からボールを奪った瞬間に攻撃のスイッチを入れます。
できるだけ高い位置で相手ボールを奪うことができれば相手ゴールまでの距離が短いですから”より速く”攻撃を完結させることができます。
そのため速攻を積極的に狙いたいのであれば「どうやって(どこで)相手ボールを奪うのか?」もかなり重要になってきます。
ボールの奪い方には
などの方法があります。
そして、速攻を考えるうえでインターセプトというのは非常に有効になります。
(ボールを持った選手がいきなりフリーな状態で攻撃できるからです)
特に相手が前のめりになって攻めてきているときには、攻撃に人数をかけている分、瞬時に守備に回れる選手が少なくなっています。
いい形でインターセプトできた時にはそのままの流れで「いい速攻」になることが多く、得点チャンスも当然増えます。
速攻に比重を置きたいチームは積極的にインターセプトを狙うべきだし、インターセプトできる状況をいかにして作り出すか?ってところをチームとしてしっかり認識している必要があります。
ハリルジャパン
ハリルホジッチ監督が日本代表に就任してから「デュエル」と「縦に速いサッカー」というものを哲学として掲げていました。
そして、当時の日本代表はその考え方をもとに”ハイプレス・ショートカウンター”の戦術を目指しておりました。
ショートカウンターは相手チームの守備のレベルに影響されずに点を取りやすい攻撃といえますので、攻撃にタレントが少ないチームでも有効な攻撃の仕方になります。
しかし、実際のところは日本代表選手たちがアジアレベルの相手にすら苦戦する試合が多くなってました。
ハリル監督の「縦に速いサッカー」という言葉にとらわれすぎて、単純な縦パスばかりを狙う戦い方になってしまっていたからです。
今までも書いてきましたが、”スペースがない状況”で急いだところで何の意味もありません。
むしろスペースがないのであれば遅攻にシフトして攻撃の仕方を変える必要があります。
おそらくハリル監督としてもそういう意味で使っているのではなく、”有効な縦パスが狙える状況を見逃すな”ってことを伝えたかったんだと思います。
そして”そういう状況をいかに作り出せるか?”って部分も重要になってきます。
ハリル監督が他にもコンセプトとして掲げていたのは”デュエル”という言葉です。
いわゆる対人勝負(1対1)で相手にやられないように個人のスキルを上げましょう、、、という意味合いのものなんですが、この言葉に関しても日本代表の選手たちはある種”とらわれすぎている”状態になっていました。
なぜか愚直に相手が”ボールを持ったところだけ”を狙っていたのです。
(ボールを奪うにはほかにも方法があるんですけどね)
実は相手がキープしているボールを奪うというのは相当にエネルギーを使うことになりますし、仮にそのボールを奪えたとしてもその周りにはボールを奪われた相手選手も残っているわけです。
そのため、ボールを奪った選手が瞬時にフリーになることはありません。
そこがインターセプトした場合の最大の違いです。
味方がボールを奪える前提で動く
「縦に速いサッカー」は単純に縦パスを急ぐんではなく、いい位置で(高い位置で)インターセプトし、そこから少ないパスで相手ゴール前まで運ぶことが重要です。
相手選手が戻って来る前に決着(フィニッシュ)をつける必要がありますし、そういう意味で言うと多少の無理をしてでも狭いスペースを狙う必要も出てきます。
そして、ここからが非常に重要なところです。
相手からボールを奪う(インターセプトする)前から、周りの選手は攻撃のことを意識した動きをする必要があります。
特にフォワードの選手は相手の背後のスペースを狙う動きをし始めていないといけません。
サッカーっていうのはタイミングのスポーツです。
いいスペースがあったとしても、そこを狙うのに1秒でも遅れてしまったら、得点チャンスにはなりえません。
相手からボールを奪った段階で味方の選手たちが動き出しても遅いことが多いんです。
当然、相手チームのレベルが上がれば上がるほど攻守の切替(トランジション)も速くなりますから、よりこの部分は意識する必要があります。
それにボールを奪った後に質の高い縦パスを送れる選手がいればより効果的になります。
過去の日本代表で
かなり昔の親善試合で日本代表とイタリア代表が戦ったことがあります。
その時の日本の得点シーンがまさに僕が延々と書いてきたイメージにマッチしてます。
↓がその時の得点シーンです。
ちなみにボールを奪取して、正確な縦パスを供給したのは稲本選手です。
この時ゴールを決めた柳沢選手は稲本選手がボールを奪って自分にパスを出してくれると感じ、事前にゴールに向かって動き出しています。
柳沢選手のシュートには普通にビックリしたのを覚えていますが、稲本選手もインターセプトからいいクロスボールを出しています。
ボールを奪ってからパス一本でゴールを奪ったわけですから、ホントに縦に速い攻撃でした。
最近の日本代表ではこういった得点シーンを観る機会が非常に少ないです。
遅攻(ビルドアップ)での崩しのレベルは年々上がってきておりますが、やっぱり速攻を鍛え上げていかないと世界と対等に戦うことは難しいです。
というわけで、今回はこんな感じです。
また次回!!