攻撃の戦術に派手さはありますが、守備戦術は非常に地味な感じがしてしまいます。
しかし、チームの強化や自身のレベルアップのために守備戦術を理解することはホントに大事なことになります。
今回はそんな守備戦術をゾーンディフェンスとマンマークの違いをもとに解説していきます。
はじめに
ゾーンディフェンスにはなじみがない
シンプルなマンマークと違い、なかなか日本人にはなじみがない守り方がゾーンディフェンス。
これを完全に理解している日本人はおそらく存在しないと言えますし、ロシアW杯でも証明されたように代表レベルの選手ですら基本的な動きができてないことも多々ありました。
僕自身もサッカーをやってきた中でそういった指導を受けたことはありません。
ですからこのテーマで書けるのは理論的な部分であって、現場実践レベルの話は正直ムリです。
サッカーを楽しむために
それでも日本のサッカーファンがゾーンディフェンスに馴染みを持つためにはこういった記事が絶対に必要だと思います。
予備知識としてこういった動きを理解しているとサッカーの楽しみ方が増えていきます。
難解ですが知れば知るほど魅力が増していくのがサッカーであるとも言えますし、最終的にはあるチームの守備対応について議論する、、、みたいな感じでやれれば一番面白いのかな~とか考えてもいます。
最近よく使われるようになった
それに最近のサッカー解説ではゾーンディフェンスやマンマークっていう言葉がよく使われるようになっています。
(「マンツーでやってる」なんて感じで表現したりしますね)
それでもサッカー歴(サッカーファン歴)が浅い人にはイマイチピンとこないところがあるのかな?とも同時に感じています。
としても、
としても、
なかなかピッチ外から試合を観ている限りでは同じように守っているように見えてしまうのがほとんどです。
今でこそ僕自身もある程度判別できるようになっていますが、始めのころはその違いが全くわかりませんでした。
理解が難しい
この記事を読まれているあなたもきっとそうだと思います。
ホントに守備戦術(サッカーの戦術)というのは理解するのが難しいです。
しかし、そこで諦めてしまっては本来のサッカーの楽しさを味わうことができません。
それは非常にもったいないことです。
今回の記事では”ゾーンディフェンスとマンマークの違い”を説明しています。
それぞれの考え方を理解しておくと少しの違いでどちらをベースに守っているのか?がなんとなくわかってくるようになるはずです。
ただし、それを完璧に判別するのはムリですし、ホントの正解(どういう意識でやってるか?)はやってる選手や監督にしかわかりません。
試合から読み取る
それでも大事なのは”試合から読み取ろうとすること”です。
正直、ゾーンディフェンスとマンマークが局面で変わってしまう”訳が分からないチーム”なんかも存在しますが、「半々でやってるのかな?」っていうことを感じるだけでも大きな違いなんです。
ゾーンやマンマークを知らない人ではそれすらも理解できませんからね。
そんなわけでこれからそれぞれの考え方について説明していきます。
ゾーンディフェンスとマンマーク
守る目的
守備の目的っていうのはただ一つ、それは「失点しないこと」です。
そして、ゾーンディフェンスとマンマークというのはその目的(失点しない)に対するアプローチの仕方や考え方が違ってきます。
ポジショニング
どちらの守り方においても”ボールの動き”っていうのは非常に重要ですが、その後に意識するポイントが違ってきます。
ゾーンディフェンスは”味方選手の位置(動き)”を意識することに対して、マンマークは”相手選手の位置(動き)”を意識します。
のに対し
わけです。
そして、ゾーンでは相手選手を離してしまうことよりも”空いたスペース”の方が気色悪いですし、マンマークは空いたスペースを気にしません。
考え方が大きく違う
ゾーンとマンマークっていうのは守りに対する考え方が180度変わってきます。
そして、試合をやったときの守備陣形の作り方もかなり変わってきます。
つまり、ゾーンディフェンスとマンマークの最大の違いはそのポジショニング(立ち位置)にあるわけです。
ゾーンは相手選手の動きを気にせずに味方選手同士の位置で陣形を組んでいくため、どんな相手(フォーメーション)と戦っても自チームの陣形っていうのは基本的に変わりません。
逆にマンマークは相手選手の動きに合わせるので、対戦相手によっては自チームの守備陣形が大きく変わってきます。
(攻撃の時にサイドの選手をワイドに使ってくる相手チームだった場合には、自チームの守備陣形っていうのは”横に間延びする”ことになりますね)
この辺は結構プロの試合を観ていてもハッキリと違ってくるんで、サッカー観戦を楽しめるポイントでもあります。
もう少し具体的な動きだったり実践レベルの考え方はもっと細かくなりますが、それをこれから見ていきましょう。
マンマークにおける立ち位置
マンマークはシンプル
マンマークにおけるポジショニングっていうのは非常にシンプルです。
ボール・相手選手(マークする相手)・ゴールの位置から自分の立ち位置を変えていきます。
この3点を結んだ三角形の中に常に自分が入るようにするのがマンマークの考え方になります。
(イメージとしてはこの図)
マンマークのポイント
ポイントはビッタリ相手についておけばいいわけでもないことですかね。
たとえ至近距離で相手をマークしていたとしても、自分がこの三角形の外に位置していた場合にはパスを出された時の対応が遅れがちです。
僕がサッカーやり始めたときはたぶん、”マンマークにすら”なってませんでしたしね。
知らないと普通にわからないことなんですけど、ここの考え方をしっかり伝えている指導者はあまりいないのかもしれません。
(うちのチームがダメすぎただけかもしれませんけどw)
スタミナが重要
それで自分達が守るべきゴールの位置は変わりません(地震でも起きない限り)ので、必然的にボールの動きとマークする相手の動きに注意する必要が出てきます。
相手がスプリントしてくればそれに合わせて自分も走る(正しいポジショニングをするために)必要がありますし、ボールが動けばそれに合わせて少しずつ立ち位置を変える必要もあります。
まあ、ここはサッカーをしばらくやっていれば動き方としては勝手に身に付くところです。
後はそれをサボらずにどこまで頑張れるか?って感じですかね。
ちなみに相手に走り勝った(相手がバテた)時はホントに気持ちいいですよ。
こっちが攻撃するときにはどフリーになりますしね。
心の中で「バーカ」って言いながら走れます
ゾーンディフェンスにおける立ち位置
ゾーンディフェンスは複雑
それで続いてゾーンディフェンスです。
こっちはマンマークと違って説明するのが難しくなります。
これまでも触れてきましたが、ゾーンではボール・味方選手・ゴールの位置でポジショニングが決まります。
ゴールの位置やボールってところはマンマークと同じなんですけど、違うのは味方選手ってところです。
味方の動きで自分のポジショニングが変ってくることになります。
味方と作る守備ブロック
よく「守備ブロック」って表現をしておりますけど、このブロックって言葉自体がゾーンディフェンスを指している感じにはなってきます。
(相手の動きで自分達の陣形が変わってしまうマンマークではブロックっていうカタマリにはなりませんので)
そして、そのブロックはボールの動きに対して”大きさを変えずに”少しずつ動いていきます。
イメージ的にはこんな感じです。
これを把握しながら試合を観ているとよくわかると思います。
キレイなゾーンディフェンス
ホントに海外の守備が堅ーいチームっていうのはこの陣形がかなりキレイです。
縦にも横にも非常にコンパクト。
ミランでプレッシング理論を発達させたアリゴ・サッキはこのブロックを25m四方に保つようにしてたそうです。
ちなみに日本代表にハリルさんが就任したときも選手同士をロープでつないで動き方のトレーニングを練習してたぐらい味方との距離感が重要になってきます。
広いとダメだし、狭すぎても意味がありません。
一定の距離間・ブロックの大きさをボールが動いていく中でも保ち続ける、、、これが大事になってきます。
それだけだと足りない
とはいえ、、、
これができただけでは「ゾーンディフェンスをやっている」ことにはなりません。
例えば、ゾーンの中にいる選手がボールホルダーに対してアプローチしに飛び出していったとします。
残りの選手はどういうポジショニングをするのか?、または相手にカウンターを食らいそうな場面でどの位置にプレスバックしていくのか?なども把握する必要があります。
危険なスペースを埋める
こういった場合は基本的に自ゴール前のスペースを埋めるのが重要になってきます。
そして、その認識をチーム全員で共有することですね。
(大体、近くにいる選手からスペースにスライドして埋めていく感じにはなるでしょうけど)
それに加えてボールホルダーが正面を向いてボールを持っているのか?または後方を向いているのか?でも、全体の動き方は変わってくるんです。
ボール周辺の雲行き
これまでのまとめ
これまで書いてきたことを要約すると、
のに対し、
わけです。
そのため、ゾーンディフェンスにおいては味方選手の位置やボールホルダーの状況をしっかり把握する必要があります。
勘違い
たまにゾーンディフェンスは自分が担当しているエリアの中に入ってきた選手に対応(マーク)しなきゃいけないって言われたりしますが、残念ながらその考え方は間違いとなります。
これはゾーンディフェンスの対応ではありません。
どちらかといえば、”エリアを限定したマンマーク(もしくはゾーンとマンマークを組み合わせたもの)”であると言えます。
(陣形は味方選手同士の距離間を意識しながら作っていきますが、相手がブロックの中に侵入してきたらそのままマークしていくやつ)
じゃあ、ゾーンではまったく相手選手についていかないのか?っていうと、それもまた違います。
これにはボールホルダーの状況がかなり関係してきます。
相手が正面を向いてフリー
Jの試合から
18シーズンJ1リーグの浦和レッズ対名古屋グランパスの試合からあるシーンをピックアップしてます。
この時のレッズがゾーンでやってるのかマンマークでやってるのか?は憶えてないんですが、ボールホルダーの状況を説明するのにはこれで十分です。
パッと見ただけでもわかると思いますが、ボールを持っているグランパスの選手はフリーになっています。
そして相手のプレッシャーもありませんから、いつでもボール(パス)を出せる状態です。
もし、ここからグランパスのFWの選手がDFラインの背後を伺うような動きをした場合、レッズの選手たちはそのFWに”対応”しなければなりません。
この対応自体はゾーンディフェンスだろうがマンマークだろうが関係ありません。
(だから、この局面だけで考えるとマンマークとゾーンは同じ守備対応をすることになります)
ボールの動きを予測する
っていうのを考えるとゾーンディフェンスでも相手をマークする(というよりその選手についていく)必要があります。
そして実は”ボール中心に守る”っていう原則においても、この動きはきっちり当てはまります。
だって、そのスペースに相手のパスが飛んでくる可能性が非常に高いですから。
ちなみにトータルゾーン(完全なゾーンディフェンス)って言われていたサッリ時代のナポリでも、こういう状況では相手選手についていってましたしね。
ただ、動き方は同じでも(マンマーク・ゾーンにおいて)その意味合いはかなり違うということを理解しておいてもらいたいです。
守備対応している選手の認識は180度違うこともあるわけですからね。
相手が後ろを向いている状態
先ほどと逆の状況
今度はレッズの選手がボールを持っている状態なんですが、ボールホルダーは自陣ゴール方向に向いています。
この状況だとたとえ、広大なスペースが自陣(守る側)に空いていたとしても、そこにパスが出てくる可能性は非常に低いです。
だから、この状況でブロック内にいる相手選手がいろんな動きをしたとしても、ゾーンディフェンスではスルーするのがセオリーとなります。
(もちろんマンマークではこの状況でも相手選手の動きに対応するのがセオリーとなります)
むしろ、こうやって相手が後ろを向いていてくれる時は自分達の陣形を整えるチャンスでもあります。
それに前線の選手はプレスをしっかりかけて、”相手が正面を向かないよう”に時間を稼ぐ必要もありますね。
状況によって対応を変える
そんなわけで、
となるわけです。
ゾーンディフェンスが難しいとか言われるのはこの部分が非常に大きいと感じてます。
ボールホルダーの状況は一瞬で変化しますし、ボール自体もいろんな方向に動いていきます。
その中で脳内コンピュータを使って情報を処理し、必要に応じてスプリントを繰り返すのがゾーンディフェンスという守り方になります。
ゾーンディフェンスの難しさ
ゾーンのメリット
ゾーンディフェンスがきっちりできるようになるとチームの戦い方のバリュエーションも増えますし、スタミナの消耗も抑えることも可能です。
(基本的にゾーンの方が走る距離が少ない傾向にありますから)
ただ、それができるようになるにはかなりの訓練や練習が必要ですし、サッカーIQも高くしなければなりません。
(だから、育成年代からきっちり教え込むしかことが大事です)
日本ではマンマークが強い
僕は長ーいことサッカーをやってきてますが、「ゾーンディフェンスをしろ」なんてことを監督から指示されたことはまったくありません。
とりあえず、”マーク”を確認。
そして、そのマークを絶対に離すな!っていうのが、守備の基本的なルールになってました。
ずっとやってたポジションがサイドバックだったんで特にその傾向が強かったんですが、ボランチをやってた時も「自分のポジションエリアに入ってきた相手選手をマーク」してた感じです。
というわけで、僕が所属してきたサッカーチームの守備戦術っていうのはすべて”マンマーク”の考え方を用いてたわけなんで、僕はマンマークの動きしかやってきませんでしたし、ゾーンディフェンスに触れる機会もありませんでした。
僕が入ってたチームが激ヨワだったからこういった事態になってたんだ、、、と今までは考えていたんですけど、どうやらサッカーの強豪校やユースチームレベルでも、あんまりゾーンディフェンスについて指導されることが無いようです。
最後に
日本人はゾーンディフェンスが苦手?
日本ではそもそもゾーンディフェンスについて深く教わる機会があまりありません。
というより、「誰もちゃんとしたやり方を知らない」といった方が正しいかもしれません。
その証拠にJリーグのチームではマンマークをベースにしているチームが多くなってますし、それは日本代表にも同じことが言えます。
僕がハリルジャパンの戦い方を評価していたときに”人を基準にした”守り方(マンマーク)をベースにしているとよく書いてました。
この守り方は海外遠征のブラジルかベルギー戦ぐらいからやり始めたわけなんですが、それ以前はそこまで徹底したマンマークをやってたわけではありません。
ロシアワールドカップの反省
ロシアW杯の最終予選などはどちらかといえば「ゾーンディフェンス」をベースに守備ブロックを構築してたわけなんですが、
といった感じで守備に安定感がなかったんですよね。
そういった状況がありながら迎えることになった海外遠征なんですけど「このまま戦ってしまうと話にならない」ってことでそこからマンマークを徹底することに戦い方をチェンジした感じになります。
これはハリルさんの指示があったのか選手同士で話し合ったのかは不明ですが、ゾーンディフェンスでは守り切れないと判断したのは間違いありません。
うまくいかなった理由
なぜうまくいかないのか?
理由は簡単です。
ゾーンディフェンスがうまくいかないのは日本代表選手の中に”ゾーンディフェンスが苦手”な選手が(多数)いるからです。
ボールを基準にして守るゾーンディフェンスにおいては味方同士の距離間(ポジショニング)が非常に重要です。
チーム全員が正しいポジショニングを取れなかったら、その部分が守備のスキとなってしまいます。
相手が攻撃をしてくる時はもちろんそのスキを狙ってきます。
そして、スキが多ければ多いほど簡単に崩されてしまうことになります。
日本人選手の守備力を強化
日本人選手の中にも高いレベルのゾーンディフェンスを身に着けている人はいます。
特に海外のクラブチームで活躍している選手なんかはきっちりゾーンディフェンスをやっています。
それでも、まだまだその数が足りていないのが現状です。
だからこそ、決して高くないアジアレベルの攻撃のクオリティでも日本代表の守備が崩されてしまっていたわけなんです。
結局、日本サッカーと世界の強豪との差っていうのはこの部分が非常に大きいわけです。
格下相手だとゴールを奪うこともそんなに難しくありませんが、強豪を相手にしたときにはなかなかゴールを奪うことができません。
そんな試合でも粘り強く戦い続けるためには「簡単に崩されない」ことがホントに大事です。
これからも日本代表の試合は行われ続けますが、ゴールシーンや派手なプレーばかりが注目されずに、もっとこういった守備の話が増えるようになったらいいのにな~と願っています。
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